2001年7月に公開され大ヒットを記録した、スタジオジブリ制作の『千と千尋の神隠し』。その中で千尋と一緒に登場するハクが人気ですよね!ハクがモデルになったのは、琥珀川(コハク川)とは実在するのでしょうか?モデルになった場所はどこなのか、ハクの正体とは!?
10歳の少女・千尋が両親とともに迷い込んだ不思議な世界。
得体の知れない八百万(やおよろず)の神々が集う油屋で、恐ろしい魔女の湯婆婆(ゆばーば)に名前を奪われた千尋は「千(せん)」と名前を変えられ、懸命に働きながら同僚や客である神々たちと出会い、成長して元の世界へ戻っていくまでの物語。
独りぼっちになった千尋を助け、味方になってくれたのが謎の美少年・ハクでした。
ハクもまた湯婆婆に名前を奪われ本当の名前を思い出せなくなったために、元の世界に戻れなくなっていたのです。
ジブリ作品の中でも人気の高い『千と千尋の神隠し』に登場する美少年キャラクターのハクについて掘り下げてみたいと思います。
千と千尋の神隠し琥珀川(コハク)のモデルや場所はどこ?
ハクは琥珀川という川の神であったことがのちにわかりますが、この琥珀川という川はどこにあるのでしょうか?
ラスト近くで千尋は、昔お母さんから聞いた話を思い出します。
「ハク、聞いて。お母さんから聞いたんで自分では覚えてなかったんだけど、わたし、小さいとき川に落ちたことがあるの。その川はもうマンションになって、埋められちゃったんだって…。でも、今思い出したの。その川の名は…その川はね、コハク川。あなたの本当の名は、コハク川!」
小さいころに千尋が落ちてしまった川…今はもうマンションになって埋め立てられてしまったと千尋が話していましたが、マンションが建つことになって埋め立てられてしまうほどの小さな川だったことが想像できます。
では、琥珀川にモデルはあったのでしょうか?
残念ながら、コハク川のモデルになった場所は特定されていませんが、千と千尋の神隠しの序盤に出てくる謎のトンネルを思い出してください。神々の世界に繋がる不思議なトンネル!
こちらのモデルになった場所は台湾の九份という場所にあるトンネルです。
千と千尋の神隠しは台湾のいくつかの場所がモデルになっているため、もしかしたらコハク川も日本ではないのかもしれませんね。
琥珀川(コハク)は実在するの?
残念ながら琥珀川は実在しません。モデルの場所も不明のため実在はしていないのが妥当です。
もし過去に琥珀川が実在したとしても、今はもう埋め立てられて、そこにはマンションが立ち並んでいるので川の姿を確認することはできないと考えるのが妥当でしょうね。平成狸ぽんぽこの舞台になったのは多摩丘陵ですが、森林を伐採してできたのか、今の多摩ニュータウンです。
コハク川のような運命を辿った川は日本の各地にたくさんあるということでしょう。
守るべき川を失ったハクは、湯婆婆のもとで魔法の修行がしたくて周囲の反対を押し切って弟子入りしたといいます。
もしかしたら、ハクは魔法で自分の川を取り戻そうと思っていたのかもしれませんね。
千と千尋の神隠しハクの正体とは?白竜?
それではハクとは一体何者なのでしょうか?
川の神様であるハクは物語の中盤以降白い竜の姿で登場します。
ハクの正体は白い竜なのでしょうか?
これについて油屋にやって来る招かれざる客、オクサレ様を思い出してみてください。ゴミやヘドロをまとって強烈な異臭を放つオクサレ様の正体は河の神様でした。
そのオクサレ様が油屋ですっかり汚れを落としたとき、翁のような顔に竜のような姿で天に舞い上がって行きました。
オクサレ様という河の神様の正体も竜だったのです。そう考えるとハクの正体が白竜というのも納得できませんか?
千と千尋の神隠しハクが自分の名前を忘れてしまった理由は?
ハクは千尋にこう言います。
「湯婆婆は相手の名を奪って支配するんだ。いつもは千でいて、本当の名前はしっかり隠しておくんだよ。」
「名を奪われると、帰り道がわからなくなるんだよ。私はどうしても思い出せないんだ。」
この言葉を聞いて千尋は湯婆婆との契約書にわざと間違った字で署名します。
千尋が名前を忘れなかったのは、完全に湯婆婆の支配下に置かれなかったことが大いに関係したと思われます。
それを踏まえて考えると、ハクの場合は本当の名前を隠さないまま湯婆婆と契約を交わしたために、湯婆婆に名前を奪われ帰り道がわからなくなったということになります。
出版されている絵コンテのみの情報で本編では描かれていませんが、湯屋で働いている人々は契約書に本名を書いていないため、湯婆婆に完全に支配されずに済んでいますが、ハクだけが本名を書いてしまったためにより強力な湯婆婆の魔法がかかってしまったようです。
ですからハクは湯婆婆の命令に逆らうことなく従順な弟子という立場でいなければならなかったのかもしれません。
千と千尋の神隠しハクの本当の名前は?
ハクの本当の名前は「ニギハヤミコハクヌシ」といいます。
「ニギ」は「和魂(にぎみたま)」にかけてあると考えられます。
「和魂」とは、日本人に固有の精神「やまどだましい」であり、「優しく温和な親しむべき神霊」を意味しています。
「ハヤミ」は「速水」つまり流れの速い川のことを表しているのではないでしょうか。
「コハクヌシ」は「琥珀主」、文字通り「琥珀川の主(神様)」という意味ではないかと思われます。
つまり「ニギハヤミコハクヌシ」という名前は「優しく温和な、流れの速い琥珀という川の神様」という意味を持っていると考えられます。
千と千尋の神隠しハクはその後どうなった?
千尋が無事に元の世界に戻ったあと、ハクはどうなったのでしょうか?
これには諸説あります。
湯婆婆に八つ裂きにされた
千尋に救われたハクは、千尋と両親を元の世界に戻して欲しいと嘆願しますが、この時湯婆婆から交換条件として八つ裂きにされてもいいのか?と聞かれています。
ハクが何と答えたかはわかりませんが、この条件を呑んでいたら、最悪の結果になった可能性もあります。
千尋の家の近くの川の神様になる
千尋との別れ際にハクが言ったように、湯婆婆と話をつけて弟子をやめ、元の世界に戻ったのかもしれません。
しかしハクがいた琥珀川は前述の通り埋め立てられているので、ハクには戻る場所が無いのですが、千尋の住んでいる場所のすぐ近くの小さな川の神様になるというラストもファンの間では噂されているようです。
いずれにしても千尋の「また会える?」の問いかけに「うん…きっと」と答えたハクの言葉どおり、どんな形であれ二人が再会できる未来を期待したいですね。
千と千尋の神隠しの都市伝説について!
『千と千尋の神隠し』にはいくつかの都市伝説が存在します。
幻のラストシーンが存在する
劇場公開のみで一週間だけ上映された幻のラストシーンが存在するという都市伝説。
元の世界に戻ってきた千尋と両親が引っ越し先に着くと引っ越し業者が先に到着しているのを見た母親が「もう来ちゃってるじゃないのー」と愚痴をこぼすシーン。
なぜかこのセリフを記憶している人が何人もいるのです。
私もなんとなく見たような気がしているから不思議です。
そして千尋は自宅近くの小さな小川を見て、それがハクの川だと気づくというハッピーエンド。
美少年のままのハクと再会して欲しいと期待せずにいられませんが、ハクは川の神様ですから仕方ないのかもしれませんね。
『火垂るの墓』の節子が登場する
水上の駅に『火垂るの墓』の節子が登場しているという都市伝説です。行ったきり戻ってくることのない線路は死者があの世へ行くためのもので、途中の駅は自殺を踏みとどまった人が途中下車できるよう存在するのだとか。
その沼原駅に立つ少女が節子だというのです。そう言われて見ればおかっぱ頭といい、なんとなくそんな気がしてきます。
節子は兄・清太を待っているらしいです。清太も亡くなってしまうので、二人は仲良く天国に旅立ったのかもしれません。
一方で、その少女は『となりのトトロ』のサツキだという都市伝説も。
ちょっとこの説は強引な気もします。
実は風俗に身売りされた少女の物語である
これは千尋が湯女(ゆな)として働くことになったことに由来しています。
湯女とは江戸時代に湯屋で客の体を洗う仕事をしていた女性のことで、売春行為を含むものもあり、湯女という言葉には娼婦の意味も込められていました。
北朝鮮の実話
実はこれは北朝鮮の実話で、拉致され名前を変えられて働かされた少女がモデルというもの。信憑性は薄いかと思われます。
『となりのトトロ』の続編
両作品ともにマックロクロスケが出てくることから、そのような都市伝説もあるようですが、それだけで続編と言うには少し強引な気がしますね。
物語の続きというのは、どうしても気になってしまいますよね。千尋がどうなっていくのか、ハクはどうなったのか、物語が終わっても先が気になってしまうのが宮崎駿監督の作品の魅力ですよね。
千と千尋の神隠しのモデルになった場所はどこ?
道後温泉
これは宮崎駿監督自身が「確かに入っている」と認めています。近代和風建築の建物の外観といい、休憩室の雰囲気といい、油屋を連想させてくれます。
渋温泉 金具屋
長野県下高井郡山ノ内町の渋温泉の中にある温泉です。木造四階建ての建物もさることながら、八つある温泉の中の一つが油屋の温泉に似ているとのこと。
四万温泉 積善館
群馬県吾妻郡中之条町の四万温泉積善館は宮崎駿監督が宿泊し、『千と千尋の神隠し』の油屋のモデルになりました。
建物2階の廊下部分がそっくりそのまま作品の中に登場しています。
鬼怒川温泉 あさや
栃木県日光市の鬼怒川温泉あさやは、ロビーの壮大な吹き抜けが油屋の造りによく似ています。
江戸東京たてもの園
東京都小金井市桜町にある江戸東京たてもの園には、失われていく東京の歴史的な建物を移築保存し展示しているそうです。
ここには『千と千尋の神隠し』のモデルになったものたちがたくさん散りばめられているようです。
千尋が迷い込んだ食堂ばかりが立ち並ぶ町、その独特な建物のモデルとなった建物の外観や千尋の両親が豚にされた食堂のモデルもここに。
武居三省堂の天井まで続くたくさんの引き出しは、釜爺が薬品を出し入れしていたボイラー室のモデルになったことで館内でも1、2を争う人気スポットです。
『千と千尋の神隠し』をじっくり鑑賞してから出かけると、既視感のある場所やものにたくさん出会えるかもしれませんね。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は『千と千尋の神隠し』の登場人物ハクについていろいろと調べてみました。
ハクは川の神様として守っていた琥珀川を人間によって奪われました。川を追われたとき、ハクは人間を恨んだでしょうか?もしかしたら恨んだかもしれません。
だから湯婆婆のもとで魔法の力を手に入れようとしたのかもしれません。
しかしハクは本当の名前を契約書に書いてしまったために、湯婆婆に名前を奪われ帰る場所がわからなくなってしまいました。これはハクにとって誤算だったのではないでしょうか。
そこに思いがけずかつて自分が守っていた川で溺れているのを助けた少女・千尋が現れたのです。ハクは自分の名前は忘れていましたが、千尋のことは覚えていました。
その時、ハクは思い出したのではないでしょうか。かつての自分がどのような役割を持っていたのかを。
私は今回ハクのことを調べて、ハクの抱える優しさや強さ、せつなさや弱さもなんとなくわかるような気がして来ました。
その上で見返すと千尋とハクの人知を超えた強い絆を感じずにはいられませんでした。ぜひハクの背景を思いながら『千と千尋の神隠し』を視聴してみてください。